山下公園に係留されたかつての客船・氷川丸は、昭和5年、新造貨客船としてシアトル航路に就航、太平洋を254回横断し「太平洋の女王」との別名もある歴史ある船。喜劇王チャップリンなど、多彩な船客の足として活躍した船は国の重要文化財、経済産業省の近代化産業遺産に指定され、日本郵船氷川丸として公開されています。
海に浮かぶ船としては「氷川丸」は、唯一の重要文化財!
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「氷川丸」は、横浜船渠(よこはませんきょ/現・三菱重工業横浜製作所)で建造された1万1622トンの貨客船(全長163.3m)。
太平洋戦争では病院船として転用されましたが(終戦までに3回も機雷に触雷しましたが、日本郵船の大型船では唯一沈没を免れています)、戦後も昭和35年まで北太平洋航路で活躍しました。
横浜開港100年を記念して、昭和36年から横浜港に係留。
太平洋での航海に堪えるため、外板の厚さは15mmもあり、船窓も丸窓になっています。
竣工時(昭和5年)の一等客室は貴賓用特別室を含めて76名。二等69名、3等138名の合計283名。
昭和6年には三等客室を48人増やして331名の乗船定員となっています。
処女航海は、昭和5年5月9日。
横浜港から神戸へ出港、神戸、四日市、清水に寄港し、5月16日に横浜港へ戻り、翌5月17日に北太平洋航路(シアトルには5月27日着)に就航しました。
アール・デコ調の一等船室など、豪華な内装に目を見張る
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一等船室に施されたフランスの工芸家(船室デザイナー)、マーク・シモンが担当したアール・デコ(Art Déco)様式の優雅なインテリア、日本郵船の擁する一流シェフによる料理などのサービス提供、さらにロイド船級協会最高クラスの安全性という、まさに戦前の日本が誇る、日米を結ぶ豪華客船だったのです。
チャップリンなど、著名人が多く乗船したのは、日本郵船のサービス、提供する料理が秀逸だったから。
内部の乗船見学ができ、フランス人デザイナーによるアールデコ様式の内装が施された一等客室などを見学する「客船エリア」、機関室や船長室などの「乗務員エリア」、そして歴史紹介の「展示エリア」と機関室から操舵室まで、くまなく見て回ることができます。
とくに、食堂入口の中央階段は必見です。
毎日正午になると時報代わりに汽笛を鳴らすので、正午前後に山下公園・氷川丸周辺にいることをおすすめ。
カウントダウンでは氷川丸の汽笛を鳴らすのが慣例になっています。
「氷川丸」をはじめとする「横浜港新年を迎える船の汽笛」は、環境省の「残したい日本の音風景100選」にも選定されています。
土・日曜、祝日には甲板(デッキ)が開放
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「氷川丸」の船名は、大宮氷川神社に由来。
ブリッジの神棚には氷川神社の分霊が勧請され、現在も神棚に祀られています。
かつては、「氷川丸」が横浜へ入港すると、船長以下乗組員が氷川神社へ参詣する慣習もあったのだとか。
さらに中央階段の手すりには、大宮氷川神社の神紋「八雲」が施され、航海の安全を祈っていました。
毎月第2・第4土曜の11:00~、14:00~は、各回先着10名限定で「氷川丸船内ガイドツアー」を実施(入館時に受付で予約し、ガイドツアーの名札をもらえばOK)。
また、土・日曜、祝日には甲板(デッキ)が開放されています(オープンデッキ、悪天候の際には中止)。
さらに詳しく氷川丸や、日本の客船の歴史を学びたい場合は、「日本郵船歴史博物館」(日本郵船氷川丸から徒歩15分)をあわせて見学するのがおすすめです(両施設セット券があります)。
横浜赤レンガ倉庫、横浜税関、横浜市開港記念会館、横浜開港資料館、50トン定置式電気起重機(ハンマーヘッドクレーン)と並んで国の近代化産業遺産に登録されています。
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日本郵船氷川丸 | |
名称 | 日本郵船氷川丸/にほんゆうせんひかわまる NYK Hikawamaru |
所在地 | 神奈川県横浜市中区山下町山下公園地先 |
関連HP | 日本郵船氷川丸公式ホームページ |
電車・バスで | 横浜高速鉄道みなとみらい線元町・中華街駅から徒歩4分、またはJR・横浜市営地下鉄関内駅から徒歩16分 |
ドライブで | 首都高速横羽線横浜公園ランプから約2km |
駐車場 | 山下公園駐車場(223台/有料) |
問い合わせ | 日本郵船氷川丸 TEL:045-641-4361 |
掲載の内容は取材時のものです、最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。 |