広重&北斎 浮世絵に描かれた神田明神・神田祭

年配の人だと神田明神といえば、明神下に住んだ銭形平次を思い浮かべるかもしれません。銭形平次は実在の人物ではありませんが、平次の暮らした明神下から男坂の階段を上ると、眺めの良い、神田明神の境内です。この男坂の石段も日本橋・神田界隈の町火消(まちびけし)の寄進です。江戸の華といわれた『神田祭』の情景も必見です。

広重『東都名所 神田明神』(佐野喜版)

広重『東都名所 神田明神』
初代の広重は、1828(文政11)年、師の豊廣(豊広)の没により美人画から風景画を制作するように転身。その出世作であり、代表作でもあるのが『東都名所』シリーズ。

神田明神は実際、高台に立っており、ビルのない江戸時代には湯島天神同様の眺望を誇っていたことがわかります。ちなみに御茶ノ水駅付近で海抜14m、秋葉原駅付近で4mで、神田明神あたりで20m内外の台地となっています。
経験的に地盤が固く、津波などの危険がない武蔵野台地の上に寺社が建立されたことがわかります。
 
 

広重『東都名所 神田明神東阪』

広重『東都名所 神田明神東阪』
1834(天保5)年から5年間ほどの間にえがかれた『東都名所シリーズ』の神田明神東阪。広重は『東阪』(東坂)としていますが、現在の名前は男坂。天保の初年、日本橋・神田の町火消(まちびけし)一番組の「い」組、「よ」組、「は」組、「萬」組の4組が石坂を明神へ奉納していますから、できた当時にはまだ東坂と呼ばれていたのかもしれません。大店の支援を背景にした、日本橋「い組」と神田「よ組」は、江戸火消しの華、最大の勢力を誇っていたのです。

坂の上には大イチョウがあり(現在は根元部分を保存)、安房(あわ)上総(かずさ)の房総半島からやってくる船乗りの目印になり、逆に、坂上からは海を眺めたといいます。
この坂の下に銭形平次が暮らしていたと、『銭形平次 捕物控』の作者・野村胡堂は想定したのです。
 

北斎『新板浮絵神田明神御茶の水ノ図』(伊勢屋利兵衞版)

 
北斎『新板浮絵神田明神御茶の水ノ図』

神田明神の鳥居と随神門。左奥に見える大屋根は湯島聖堂。神田明神は高台にあったため、7月26日(西暦で9月中旬)には月の出を待つ「二十六夜待ち」が行なわれた場所にもなっていました。

歌川貞重『神田大明神御祭図』(古賀屋勝五郎)

歌川貞重『神田大明神御祭図』
「江戸総鎮守」の神田明神、日本橋川より北東側が神田明神、南西側は山王権現(現・日枝神社)がそれぞれ氏子としていました。

9月15日(現在は5月)の例祭は、神田祭と称され江戸三大祭の一つ。あまりに華美になったため、江戸幕府は、1681(天和元)年から山王祭と隔年で神田祭を開催するように命じています。歌川貞重『神田大明神御祭図』は、天保〜嘉永頃(1830年〜1848年)頃の神田祭の将軍上覧行列を描いたもの。

豪華な山車(だし)行列は、未明に湯島聖堂隣の桜ノ馬場に集合、外神田、内神田と進み、田安門から江戸城内に入りました。将軍の上覧に供された後、竹橋門から江戸城を出て播磨姫路藩・酒井家屋敷前(神田明神旧地=現在の大手町1-2)を通り、常盤橋門(大手町2-7/日本銀行の前)を出たところで解散しました。

江戸三大祭でも「神輿深川、山車神田、だだっ広いが山王様」と謳われたように、神田祭は、豪華絢爛な山車に特徴がありました。江戸時代には錦絵に描かれたような見事な山車の行列だったようですが、明治以降に路面電車の開業(電線の敷設)や電信柱・電線の敷設で山車の通行に支障が生まれ、さらに関東大震災、第2次世界大戦の空襲により、山車が焼失したことで、現在は山車に代って町御輿が主流となっています。
1861(文久元)年の記録では一番山車(諌鼓鶏の吹貫の山車/日本橋大伝馬町)から三十六番山車(源頼義の山車/松田町=現・鍛冶町2丁目)まで、36基の山車が繰り出しています。

江戸切絵図に見る神田明神

神田明神/江戸切絵図

神田明神
名称 神田明神/かんだみょうじん
所在地 東京都千代田区外神田2-16-2
関連HP 神田明神公式ホームページ/
電車・バスで JR・東京メトロ御茶ノ水駅から徒歩7分
ドライブで 首都高速神田橋ランプから約2.2km
駐車場 40台/無料
問い合わせ 神田明神 TEL:03-3254-0753/FAX:03-3255-8875
掲載の内容は取材時のものです、最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。

神田明神

2017.01.05

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