東京都中央区日本橋に建つ日本銀行本店本館は、明治29年2月29日竣工で辰野金吾(たつのきんご)設計の建物では現存する最古のもの。明治24年に濃尾地震が発生していることから、高橋是清の指示により耐震性にも重きが置かれ、2階・3階はレンガ造り石貼りとなっています。国の重要文化財に指定され、東京の建築遺産50選に選定。
明治政府が辰野金吾設計で建てた、初の本格的な中央銀行が現存
明治5年に明治政府は新紙幣(円建ての不換紙幣)の発行を開始し、明治6年には国立銀行が国立銀行紙幣(金兌換紙幣)の発行を開始しています。
明治10年に西南戦争が勃発し、戦費調達のため大量の紙幣を発行してインフレが生まれました。
紙幣の発行を単一化することを目的に日本銀行は、明治15年6月に「日本銀行条例」公布され、10月10日に日本銀行が開業しています。
当初の店舗は永代橋(現在の橋から100mほど上流に架橋されていました)のたもとにあった北海道開拓使物産売捌所(明治14年築、ジョサイア・コンドル設計、レンガ造り2階建て/現・東京都中央区日本橋箱崎町1)を利用したもので、すぐに手狭になってしまいました。
開業の翌年には早くも店舗の移転が決定し、江戸時代から五街道の起点で、交通の要衝で、金融・商業の中心地として栄えた日本橋、しかも貨幣にゆかりの深い「金座」跡に本店が建設されることになりました。
日本の金融の中心地であるため、当初は総石造りの重厚な建物を予定していましたが、濃尾地震の反省から積み上げたレンガの外側に、外装材として石を積み上げるという方法に変更。
地階と1階は厚い花崗岩を利用し、2階と階には軽くて薄い安山岩が使われています。
辰野金吾は設計にあたって欧米諸国の銀行を14ヶ月も見学。
外観はフランス蔵相レオン・セーの助言もあってブリュッセルのベルギー国立銀行を参考に、ネオ・バロック様式を採用しています。
大正12年の関東大震災でも建物はびくともしていません(火災で当初のドームは焼失)。
エレベーター、水洗便所、防火シャッターを供えるまさに近代建築となっています。
正面玄関入口には、2頭のライオンの紋章がはめられていますが、これは辰野金吾のアイデアなんだとか。
辰野金吾は、その後、日本銀行大阪支店(明治36年築)、日本銀行京都支店(明治39年/現・京都文化博物館別館)と立て続けに日銀を設計しています。
見学希望の場合は、1週間前までに電話予約を
日本銀行本店の見学は、1週間前までに電話予約で可能(先着順/日本銀行紹介ビデオ上映=約20分、見学案内=約40分)。
重要文化財に指定されている本館の外観、昭和初期に竣工した本店旧館内部の一部、新館(1階営業場)を解説付きで見学できます。
予約不要の当日受付見学(人数制限あり、本館見学は外観のみ)も実施しています。
ちなみに日本銀行を空から眺めると「円」の形に見えますが、明治時代には略字はなく、「圓」を用いていたため、あくまでも偶然の一致です。
日本銀行本店の周辺には、三越日本橋本店、日本橋、髙島屋東京店、三井本館と国の重要文化財となった建物が多く、北町奉行所跡、三浦按針遺跡、名水白木屋の井戸など東京都の旧跡も多いので歴史散策に絶好です。
日本銀行本店 DATA
名称 | 日本銀行本店/にほんぎんこうほんてん Bank of Japan Head Office |
所在地 | 東京都中央区日本橋本石町2-1-1 |
関連HP | 日本銀行公式ホームページ |
電車・バスで | 東京メトロ銀座線三越前駅から徒歩5分 |
ドライブで | 呉服橋出口からすぐ |
駐車場 | なし/周辺の有料駐車場を利用 |
問い合わせ | 見学受付TEL:03-3277-2815 |
掲載の内容は取材時のものです、最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。 |